うさぎのダンスの歌事件〜!
【人生すごろく劇場:それいけM脇くん?】
『わたしの大好きな唄だったのに…うさぎのダンス事件における検証』
さて、文化祭に向けて仕事は進み、会話は飛び交う生徒会、
緊張感もほぼ解けてきて、周囲にも、
『どうもM脇は、あの新入りのおんなにさっぱり相手にされんで苦労しとるようじゃのぅ。
ま、そんなことになるんじゃないか、とは 思うとったがの!』といった、わたしにとっては願ってもないあたたかな見識がすこしずつ広がって、
わたしの容赦なき拒否反応に多少は言動を改めはじめたM脇くん。やっと平常心に近い状態で仕事はさくさくと進む…良かった良かった、だったのに、
なんとかお友達になりかけたその矢先、 またもおもわぬ地雷を彼は踏む…。
M脇くんとは、普段は、じつに真面目な几帳面な地道なたちの ひとである。
初めて生徒会室で出会った時だって、眉ひとつ動かさず無表情な応対をされた。
それが、なんの拍子でか、いきなりムチャクチャな崩れ方をするのだ。
生徒会室の机の東すみっこで文化祭のなにやらの数字集計をやりながら、あ、珍しい。M脇くんがにこにこしながら歌をくちずさんでいる。
うーん?
今日はいったいどうしたんだろう…何がそんなに楽しいの?
といつもより一歩二歩、近付いてみた…
とんちゃんにも、少しは妥協しないと、あんまりな態度はしたらダメだよって言われてるし、ね。
さて、その時彼がうたってたのが なんと
『タラッタラッタラッタ うさぎのぱんつー…』
あ、その歌はわたしが大好きだった歌よ〜。NHK教育の「おかあさんといっしょ」で聞いた歌だ!
…でもその続きの歌詞忘れちゃって、いまじゃ歌えないんだよね、
それとなーく、聞いて覚え直させてもらお……ん、いや待てよ?
…『うさぎのぱんつ?』
そこは『うさぎのダンス』でしょー?
『…ッタラッタラッタ、 うさぎのぱんつ〜、前は黄色でうしろは茶色ぉ〜♪』
あぁ、わたしの頭の中を おもらしうさぎが 何匹も困った顔して 跳ねてゆく!
うん、三十路も四十路もとうの昔に越えた今のわたしならば、ガハガハ笑って済ませるような、ホントに他愛のないことなのだけれど、
17歳を目前にした当時のわたしには、
もう、なんというか、大好きな歌への『無残な冒涜』としか思えなかった…。
なんという下品な!。近付いたりするんじゃなかった、こんなひと!
お耳ぴょこぴょこはずんではねる、可愛いうさぎのダンスを返せー!
以後、かずかずの失策やあちゃ〜な事件を経て、何度もいいますが、最後の最後の最後には旦那さまになる身のうえだというのに
なぜかM脇くんのわたしの日記の上での呼称は、例のM氏、あの迷惑なひと、から、例の理学部、理学部の御仁…などといった、なんとも無味乾燥な表現でしかあらわされなくなり、どんどんと略されてゆくのでした…。
ちなみに、みのむしの詩10号にて
『実にうたて、うたて、いとうたてし。』との心境であると、M脇くん本人も書いてますが。
自業自得なのです。