お母さんは、あの時…。お父さんの腕にしがみついて、お祖母ちゃんに向かっ叫んでたの…。

1999年くらいのまだ寒い春先のことだったと思います。

お姉ちゃんが
ヘンなキタナイやつ扱いされて
いじめられてたことがわかり。不登園になって…。

お母さんがヘンになって
眠りもしないし食べもしなくなって、
お医者さんがくれたお薬もきかなくて
目をはなすと、どこかに歩きまわって行ってしまう…と電話でお父さんにきいて

一宮のおばあちゃんは
高松から飛んできました…。

そして、きっと育児ノイローゼだわ。そんな時はね、お母さんが抱っこしてあげるといいんだって、ラジオで聞きましたって言って

お母さんに向かって両手を広げたの。



お母さんはね、
真っ青になって
後ずさりして
叫んだわ。


『恵さん、止めて!あのひとのとこに、私をやらないで。

あのひと、
わたしを叩くの!
わたしをぶつの!

やめて!
やめさせて!

わたしを

あのひとのとこなんかに、やらないで〜!』


叫んだあと
気が遠く遠くなって。

意識を失いながらね。

もうひとりのお母さんは
こう言っていたの。


ああ…それだけは、言っちゃダメ。
あのひとにあんなこと、言っちゃダメ、なのに…。

あのひと、
すっごく
つらかったんだ…。

わたし、知ってたのに。

なんで
なんで

いまさら、言っちゃうのよ?

わたしの バカ…。わたしの、弱虫。