みんなのおしゃべりしてる声が常備薬でした…。
高校を卒業して何年かして
わたしの睡眠はますますヘンテコになっていってた。
本箱の整理をしていて見つけた
あのとき 録った文化祭本部会議のテープ。
五年ぶりくらいに聞いた
みんなの声。
聞いて笑ってるうちに、わたしいつの間にか眠ってしまっていて…
以来、どうしても眠れないときや、嫌な事が起きたとき。
わたしはテープの声を聞いてた。
「…ほな、そろそろまとめに入ろうかのぅ。文化祭副委員長のKくん、どうですか?」
「今回、参考にっちゅうことでの、丸亀高校のほうにも見学に行ってきたりして…かなり考えさせられたことがあるわ。たぶんみんなも各々用意をすすめながら、思ったこやろと思うんやけど……。」
云々かんぬん。ワイワイガヤガヤ。
わたしの声って思ったより高いや。
M脇くんが、また妙に…ななめにずれたどや事を言って、みんなにとっちめられてる。笑っちゃう。笑…っちゃう、なん…ど…聞いて…も…なんど…聞い…て…も……。
グーグースースー。
わたしの睡眠薬で気持ちの転換薬、で安定剤。
みんなの声がわたしの常備薬だった。
家ではホントに安心したことがなかったし。
こうなりたいという明日も持ってはいなかったから。
年がら年中
不安で胸がざわざわしていて。
いつだってよくは眠れていなかった。
もう母もわたしを叩いたりはめったにしなかっのに…。
ただ、時々父が空威張りをして妙なことをいっては威張る。聞かされているこっちがあまりの屁理屈に笑いそうになる…、
うっかり笑っては大事なそれを、真面目にきいて我慢するため、
母は…思いっきり自分の身体ではなく、わたしの身体をつねってたけれど。それは女学生さんが、お友だちどうしてふざけて…するようなことだったんだよ。きっと。
何人かのひとはそれを見たはず。知ってるはずだ。
車に乗せてくれたひとなんかは、特にそうだと思う。
まるで休日にディズニーランドから帰ってきてる、車の中の子どもみたいに。
助手席で
爆睡じょうたい。
教会の礼拝中にも爆睡じょうたいになって、いたっけ。
教会の礼拝の中やそのひとのいるすぐそば…
ああ、ここならなんだかきっと大丈夫。
わたしにとって本当に。安心していい場所なんだって…安心したとたん、
不眠での欠乏がそこであふれ出ちゃってたんだろう…と思うんだ。
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