z.…の後から、ずっとあとのお話まで

cat-work2302016-08-14

あれから、
ほかのどんな夫婦にだって起きることだろうけれど

私たちの結婚にも、あれこれと暗雲がたちこめたり、ややこしい事が持ち上がったりして、

M脇の瞳が悲しそうに苦しそうに見えたり、
わたしの身体感覚がこんぐらがったりするたびに、

バカなわたしは考えてしまっていたらしい。


ああ、わたしの大馬鹿三太郎!
こんなわたしのグズグズな人生に…、ひとひとりを否応なしに巻き込んで、無計画にも、厚かましくも…増殖までしちゃうなんて…!

ああ、ホントにごめんなさい。
あなた以外のひとたちは、ちゃんと逃がしてあげられたのに。
どうして
あなたを巻き込んでしまったんだろう。

よりによって
身体も気持ちもそんなには強くない…。
自分からは友達とも、師とも、呼べるひとはじつは持っていないらしい…。

ひとり
ポツネンと生きていた
不器用な、あなたを。


あの初恋のIくんが

わたしの住んでいた家を探してて会いにきてくれて…交際を申し込まれた時にだってさえ……
わたしは
ごめんなさいとわたしビョーキなんですと、

ちゃんとお応えして、笑ってサヨナラできていたのに…。

それだけじゃない。

わたしに
申し込んできてくれた、本当に優しい賢い良いひと達にも、

一方的につきまとってくるような、ちょ〜っとあなたに似てたビョーキなひとたちに対しても
そうなの、
わたしには必殺技があったの。

たとえどんなに無礼なしつこい相手だって

うちの高校の卒業アルバムを抱えていって、

おもむろに部活紹介写真の陸上部姿のM下先輩の写真を見せて
『じつはね、
わたし
この写真のひとに重症な片思い中なんです。

叶わないのはわかってるけど、どうしても
あきらめられないの。

そういうわけなの、ごめんなさい。』

…の、
この手で一撃。あらあら不思議。

どんなベタベタ厚かまし君も
顔色かえてシュンとして

首うなだれて回れ右。
百発百中さようなら。

一切それからは無事に、音信不通〜になってくれるのだ。

(え〜と……先輩、ホントにホントにスミマセンでした。

先輩の預かり知らぬところで
そんなことを陰でやっていた、不埒なわたしを、
どうかどうか
お許しください。
背に腹は変えられず…、それに、なにより一度やってみたら…効果が即座で絶大だったもんで…ついつい毎回。
先輩の肖像権を勝手に使い回して。

ああ、本当にスミマセン!)


あのリスト。自分ではもうカンペキだと思っていた、
ステラ先生と祈って約束しちゃった手前…作らなくてはならなかった、わたしのリスト。

あんなもの
作らなければよかった。

『もしもこんなひとがやってきたら、お嫁に行ってもいいです』だなんて。

シスターに絶対絶対、なってみせるつもりで。結婚ばなしなんて、全部無理にして…みせるつもりで…、
くっつけた、
あのラストの条件。

『わたしの生徒会室のお兄さん全員の、推薦状を持ってきて!』の

わたしのお兄さんリスト…にM下先輩を厚かましくもお入れしちゃったのが、
そもそも、身の程知らずも甚だしい、失礼なこと、失敗だったのだ。

そう。
あんな
脳内ままごとなんてしていたのが、そもそも、どうしようもない甘ったれの露出。

いけなかったのだ。

何度思っても
失敗だった。

今のわたしと同じ年くらいだった田中先生を
心の中で、母方の祖父みたい…だなんて思って慕い…。

S藤さんを生徒会室のおとうさん、とんちゃんを生徒会室のおかぁさん…みたいだなんて…思って眺め…。

そうなんだよ。同い年だったんだから。

そんな甘ったれしちゃいけなかったの。

ああ、せめて。せめて、あの時。

M下先輩じゃなくS籐さんを生徒会室のお兄さんのひとりに、数えてさえいたら……

K君とスッゴく仲が良かったわけじゃなかったし、研修医のまっただ中でしょ、結婚式にも二次会にも参加したりは、していないはず。


こんなことにはこんなことには
…ならなかったのに〜って!


確かに
言えてる。

でも言っちゃだめって考えたんだね。

言っちゃだめ
言っちゃだめ
それを言ったら
ひどすぎる。

頑張って
頑張って
頑張ってたんだね?

そうして自分のちからの限界がきて

そうしてきっかけになるような状況と強いお薬の服用作用。

ドッカ〜ンって。

消えてしまったんだね?
消してしまったんだね?

大事にしていたはずの…記憶といっしょに

KEIさんとの
たくさんの初めて。

毎分毎秒の
たくさんの
いろんな記憶を…。